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空気の匂い

街々には独特の香りがあり、その場特有の時間の流れがあると感じる。

 

私は子供の頃から親の仕事で転勤による転校も多かった。実に住んだことがあるのは17箇所、都内もまあまあ、あちこち住んでいたのだよ。だから街々で雰囲気というか、波動というか、それの違いが本当にハッキリと感じられる。

 

私が20代の頃、都内に住んでいたとしても所謂「下町」に行ったことがない、という人はまあまあいた。私は昔は飲めていたので、1人で飲みに行くことも割とあって、ふらりと千駄木や根津あたりに行くこともあった。

 

一口に「下町」と言っても、例えば浅草と木場は全く違う。柴又なんてどことも違う。昔はある職業の方々がその街ごとに集まっていた。その気質というか、波動のようなものが土地に染み付いているのだろうな。

 

何だろう、下町のパキパキした「てやんでぇ!」的な雰囲気は木場>浅草>柴又、だったが今はもう違うのかしら。いい意味で情報が広く知られて、あまり境のようなものがなくなっているのか?

 

新しく入ってきた人たちはそうしたものを持ってない。弊害もあるのかもしれないが、その独特の空気の匂いが変わってしまうのは寂しい気もする。

 

一時、柴又にいたときがあった。

言わずもがな、寅さんの街だ。帝釈天があり、日本で1番短い参道があり、すぐ裏には江戸川の土手が続いている。この土手を歩きながら、お江戸の様子を見ると、うちの方の渋谷区からの眺めとは全く違う、何となくノスタルジックな眺めが広がる。

うちの方はビルが多いから空が狭いが、江戸川の土手からみる東京の空は広い。息ができるような気がする。流れている時間が他の下町とは違うんだ。

ゆったり、ゆっくり流れている。

 

何だろうね、あの感じ。

寅さん見た後のホッコリした感じにも似ているな。

 

帝釈天の参道に一軒、とても好きな店がある。草団子の店なのだが、当時はいつ開いてるかわからない、開いていたらラッキーな店だった。本当の手作りで、一日経ったら餅が固くなるほんまモン。

今でも、よもぎの香りいっぱいのお団子なのかな。

それに比べるとうちの近所はあまり日本ぽくないかも。新しいお店が目白押し。あの役所さんの主演映画「Perfect Days」のお洒落なトイレがある場所が徒歩5分くらい。

 

そこの土地の匂いというよりは、色んな雑多な匂い。ここに来た25年前はとてもゆったりとした時間が都内なのに流れていて、どこか懐かしさのある風景もあった。便利でお洒落な街になったが、なんとなく寂しい。

「設定」の大切さ

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