高校の同級生と40年ぶりに旅行に来た。私は高校が量だったのだけど、最初の部屋が同室でじゃなかったらあまり話してないかもね、と言うくらいタイプが違うと思っていた。
彼女は旧姓林さん。私は結婚して林さん。林のみっちゃんは地頭の良い人で、私がちんぷんかんぷんだった物理で20点のテスト、満点だし、学年トップの成績だったし。どんな大学に行くのかと思ったら、芸大だよ。さすが…
でも美術史で行ったから、様々な才能溢れる仲間たちを見て、自分は何ができるのか、とコンプレックスに陥った。サッカー部のマネージャーをしていた彼女。同じ時代には日比野克彦さんがいたりする。
そんな中で卒業し、ある大手企業の宣伝部に配属。長年悶々としてきた挙句にカメラを手にする。そして個性的なアーティストとなっていく。
カメラマンの友人は沢山いるし、本当に撮る人によってこんなにも切り出し方が違うのかと思うような感じですよね。そこに同じものはない。
みっちゃんはあまり人物像は撮らないが私の結婚式の写真は彼女に撮ってもらった。みっちゃんの人物の写真は私的には「松本清張的」と呼んでいるのだが、なんというか綺麗に撮るというよりも、その人の中にある内面の人間的な部分が滲み出てくるような感覚。
持ち前の研究者気質であるテーマに沿って、調べながら関連する写真を撮っていく彼女のプロジェクトはなかなか見応えある。
2018年に京都グラフィーというところの最優秀賞を受けて、その年のスポンサーが富士フィルムでその年に東京で展示をすることになり、2018年秋に六本木ミッドタウンで2週間展示されていた。
ある時、日本にいた絶滅したと思われる日本狼のことを知り、俄然興味が沸いたという。いかにこの怖がられていた動物と人間は暮らしていたのか。それを調べていった。
狼は地方によっては神様のように扱われ、他の地方では害獣として駆除対象になったり、伝承の物語もレパートリーは数あるそうだ。秩父にいる日本狼を追い続けている男性に会ったり、一緒に山に入ったりしているうちに、地元に伝わる狼の話、保存された骨や毛皮などと出会ったりしていった。
生まれた時、狼のお乳で育ったと言われる強靭な肉体を持っていた男性のひ孫さんやら…。私はそれを聞いていて、世の中には色んな人がいるのだな、と感心するのだが。
その取材の記録を写真で残し、物語のような写真集を作ったみっちゃん。一冊はそうした日本狼についての取材の記録、同じような目線で読み進められるようにまとめられている。もう一冊は狼の伝承を集めた絵本のような作品。これが、この木箱に入っている。
こんな写真集を作れるみっちゃんが誇らしい。
これが認められて京都グラフィーでの受賞となる。いまはこれまた絶滅種の日本あしかをテーマに調べている。
私の中ではカメラマンでも写真家でもなく、ビジュアル・ストーリーテラーだと思っている。
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